「浮気していても子どもは私のモノ、裁判しても負けるよ(笑)」

--10年前、町内の夏祭りの日の出来事--

 

「バターン、バタバタ...」

荒々しく閉められたドアに動き回る足音

土曜日から実家に子どもを連れて泊まりに行っていた"はず"の妻が下の子どもと帰ってきたようだ。

騒がしい朝の騒音で目覚めると鬱蒼とした空が私をさらに憂鬱にさせた。

 

昨晩はほとんど眠る事が出来なかった、実家に泊まる筈だった妻がそこにいなかったからだ。

妻は実家の親に仕事があるからと子どもだけ預けて帰ったと知り、どこにいるか何度も電話してメールもしたが私からの連絡には応答せず、家に戻る事もなかった。当然だ、私には子どもと実家に泊まりに行くと言って家を出たのだから。

 

"今日と言う今日は許さない、認めず態度改めないなら追い出すまでだ"

 

私は犬の世話をする為に階段を降りると妻は朝からシャワーを浴びていた。その行為が更に私の感情を逆撫でするとは知らずに。

通り過ぎようとした時、通路に置いてあったカバンの半ばで妻の携帯が光り、目を向けるとそのメッセージは昨日妻が何をしていたのか裏付けるものだった。

 

私は一瞬で頭に血が昇り、風呂から上がってきた妻に詰め寄り、昨晩どこで何をしていたのか問い詰める事にした。

 

「昨日どこに居た?実家しかないよね?へんな勘繰りやめてもらえるかな、◯◯だけで泊めることは無理だって実家の父に言われてます」としらを切った。

 

私は先程の携帯のメッセージの内容と子どもと電話した時に「お母さん仕事があるからって帰っていったよ、◯◯だけ明日の朝迎えにくるからね」と泊まらずに帰ったと聞いていたのでその事を伝え、嘘ついて外泊した事を認めて生活態度を改める気がないのなら離婚で構わないから子ども置いて出て行ってくれと捲し立てた。

 

いつもならここで謝るか涙を見せるのだかこの日は様子が違ったのだ。

過ちを認め謝るどころか、自分が見える様に携帯を置いていたにも関わらずメッセージを見た事を気持ち悪いと咎め逆ギレして挑発してきたのだった。

私も引き下がらす、これ以上はもう話す余地もないと覚悟を決めて離婚を切り出し、すぐに家から出ていく様にうながしたのだが、妻は人を小馬鹿にしながら笑って言った。

「はいはい、そうですね、浮気で結構です。私があなたを無理なので離婚でお願いします。でも子どもはあなたが連れて行く事はできない、裁判所の判例でも出ていますよ、さっきから知った様な事言ってるけど、調べました?お金も貰うのは私の方ですよ(笑)まああなたからのお金なんていりませんが念の為。私が浮気していても子どもは私のモノ、裁判やってもあなたは勝てませんよ(笑)」と言い捨て出かけて行った。

話にならないので私は妻の実家に連絡し話をしてもらおうとしまささたが、電話したらところ何故か私が悪い事になっており、離婚する方向で既に話が決まっている様でこちらも全く話にならなかった。

何故こんな仕打ちを受けるのか理解出来ずリビングに向かうとつい先日機種変した妻の古い携帯が置いてあり、いつもなら決して触る事はないがこの件についての事と経緯がわかるかも知れないと確認する事にした。

妻は自分の友人や両親に離婚したいと相談していた様で、その原因は私に見に覚えがない事ばかりだった。自分に都合の悪い事は言わず好きな人がいるとも言っていた。妊娠を仄めかす内容やその相手とは再婚する気はないがいつまでも恋はしたいなど好き勝手な事ばかり言っていた。私の子どもならいらないと言う内容や中絶の相談まで。

 

借金はあったが家族の為に身を粉にして働いてきて、必要だと言われたら何をしてでも工面してお金を用意していたし、周りの友達はみんなもっと遊んでいる、私だけ自由がない、と言われるが飲みに行きたいと言われたら文句を言いながらも毎回飲みに行かせる様にしていた。

「バスがある時間までに必ず戻るから」と毎回約束するが守られたことは一度もなく、お金が無いはずなのにタクシーで帰ってきたり知らない男のクルマで送ってもらってきた事もある。

つい先日も飲みに出した時、深夜2時を超えても戻らないのでコンビニに行こうと外に出たら、少し離れた場所で若い男とイチャイチャしている妻の姿を見た。

なんで家族の為に休みもなく働いて来た自分が、何も悪いことした覚えもないのに一方的に悪いとされ、家族を裏切り浮気して男に入れ上げた人間に子どもや家庭まで全て奪われるんだろう、俺が一体何をしたんだ、妻もその両親も友人も憎くてたまらなかった、理不尽な言動で挑発する妻に手を上げない様に堪えるので精一杯でその辺りから記憶がなく意識を失った。

 

どれくらい時間が経ったのだろうか、目を覚ました時には救急隊員に囲まれており「蘇生確認」と聞いて自分の身に何が起こったのかわからなかったが頭が痛くて近づいてくるサイレンの音が耳障りだった事は覚えている。

 

どうやら私は無意識のうちに首を吊り自殺を図った様だった。

「現実は小説より奇なり」

「余命10年」これは私が10年前に救急搬送され帰り際に医師から言われた言葉である。

この【備志録】を書こうと思ったのは、大きな後遺症もなく今年で10年目を迎え「もしかしたらこのまま普通に生きられるのでは」と期待してしまう反面、余命通り本当に死んでしまう可能性もある訳で、本当は誰かに話したくても家族の恥(問題)を広める訳にも行かず今日まで誰にも相談できなかったし、どれだけ考えても理解も納得も出来なかったから、匿名のこの場で【備志録】として記録することにした。その他に日々の生活など理不尽な振る舞いばかりだが、過去の振り返りとともに真実を綴っていこうと思う。

 

これから語ることは全てノンフィクションだが、あくまで私の主観による独り言である。